⭐️⭐️⭐️
“Respect”
監督:リーズル・トミー
出演:ジェニファー・ハドソン、フォレスト・ウィテカー、他
1960年代にデビューし、「ソウルの女王」と呼ばれたアレサ・フランクリンの伝記映画。
牧師の家庭に育ち、父の教会でゴスペルを歌うなど、早くから天才的な歌声を披露していた少女時代から、ソウル・シンガーとして絶頂期の1972年までが描かれている。
その栄光の裏で、少女時代は牧師でありながら母に暴力を振るう父親に束縛され、誰の子か決して明かさなかった子供を十代で生み、結婚した夫兼マネージャーにもやはり暴力で支配された人生だった。アルコールに溺れて仕事にも支障をきたしたり、男性による支配に苦しみながらも、自らそれを引き寄せてしまう苦悩も描いている。
映画の中のアレサが「自分の中に悪い虫がいる」と語るように、彼女の心の奥底に深い闇が拡がっていることが仄めかされてはいるものの、深くは踏み込んで行かず、ほどほどのところまでで抑えている感じだ。
だから面白さもほどほどである。
自分を見失うほどの苦悩の末に最後は、自身の原点であるゴスペルと神のもとへと回帰し、教会でゴスペルを歌うライヴ・アルバムの制作を自ら提案し、それが大成功するというところで映画は終わる。
人間ドラマとしては、もう少し踏み込んでほしかった気もするけど、音楽ドラマとしては、その見どころのひとつである、代表曲の「リスペクト」や「貴方だけを愛して」が出来上がった瞬間(それがどこまでリアルかはともかく)などはしっかり描いているので、まあ、まともな音楽伝記映画と言えるだろう。
音楽伝記映画なのに楽曲の使用許可が下りないまま制作された最低の「曲無し映画」も多い中で、これはちゃんと楽曲が使用されてるし、さすがのジェニファー・ハドソンが見事に歌いこなしているので、それだけでも上出来の映画と言うべきだろう。
(Goro)