Mahler
監督:ケン・ラッセル
主演:ロバート・パウエル
19世紀末のウィーンで指揮者・作曲家として活躍したグスタフ・マーラーの生涯を、やりすぎで悪趣味な演出が得意な鬼才・ケン・ラッセル監督が描いた音楽伝記映画。
1974年にイギリスで製作された作品だが、日本ではその当時は公開されず、十年以上後の世界的なマーラー・ブーム(そんなこともあったのだ)の只中にやっと公開された。
わたしも二十歳ぐらいのときにそんなマーラー・ブームに興味を惹かれ、クラシックを聴くようになるのだけど、この映画を観たのはその翌年ぐらいだった。
もうだいぶマーラーの音楽を好きになった後で観たけれど、この天才作曲家を下品に戯画化し、シリアスとおふざけが入り混じった、あきらかに悪趣味でやりすぎな映画に困惑した覚えがある。
でもあらためて見直すと、栄光の裏側でやりきれないほどの悲劇に満ちていたマーラーの人生を余すことなく描き、ちょっとふざけすぎなところはケン・ラッセル大先生のスタイルであり、より悲劇を際立たせているとも言える。
マーラーと同様に作曲家を目指していた弟の自殺、友人の作曲家ヴォルフの発狂、5歳の娘の死、作品への酷評、ユダヤ系であることへの差別、ウィーン宮廷歌劇場の総監督の地位を得るための改宗、心臓病の持病のため長く生きられないのではと不安におののく日々。そして1911年、敗血症で51歳でこの世を去る。
マーラーの音楽(特に9曲の交響曲)の魅力は、シリアスとユーモア、ロマンティックとリアル、崇高と世俗、栄光と苦難、ポジティヴとネガティヴのような、真逆のイメージが1曲の中に入り乱れることだ。
精神分裂的と悪く評する人もいたが、そこまでわけのわからないものではなく、親しみやすいメロディーが多い、深く考えなければ逆に聴きやすい音楽とも言える。
そんなマーラーの音楽のスタイルに、この映画のスタイルはよく合ってるのかもしれない。
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