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Otis Clay
“Trying to Live My Life Without You” (1972)
なんだ、またソウルかよ。ロックはどうした。
と不満に思われる方もいらっしゃるかもしれないが、なにしろ大雑把な性格のわたしには、実際のところロックとソウルの何が違うのか、厳密なところはよくわからないのである。シンガーの肌の色が違うのと、うるさいギターがないのと、ホーンがよく歌うという瑣末な違い以外は、どっちも同じようなもんだと思っているので仕方がない。
オーティス・クレイはミシシッピ州出身で、ゴスペル・シンガーからキャリアをスタートさせ、1971年にメンフィスのハイ・レコードに移籍し、1972年に1stアルバムとなる本作をリリースした。
オーティスといえば相場はレディングと決まっているようなものだが、こちらのクレイも憶えておいて損はないだろう。オーティス・クレイもまた、オーティス・レディングの系譜に連なる、ディープ・ソウル(サザン・ソウル)を代表するシンガーだ。
本作などは大師匠のオーティス・レディングの最高のアルバムと比べてもまったく引けを取らないほど、内容充実の名盤だ。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 愛なき世界で
2 アイ・ダイ・ア・リトル・イーチ・デイ
3 ホールディング・オン・トゥ・ア・ダイイング・ラヴ
4 アイ・キャント・メイク・イット・アローン
5 ザッツ・ハウ・イット・イズ
SIDE B
1 アイ・ラヴ・ユー・アイ・ニード・ユー
2 ユー・キャント・キープ・ランニング・フロム・マイ・ラヴ
3 プレシャス・プレシャス
4 ホーム・イズ・ホエア・ザ・ハート・イズ
5 トゥー・メニー・ハンズ
シングル・カットされたA1「愛なき世界で」は米R&Bチャート24位まで上昇したクレイの代表曲だ。B3「プレシャス・プレシャス」もファンに愛された名曲である。
彼の全キャリアにおいて、「愛なき世界で」が最もヒットした曲で、トップ10ヒットなどはなく、本国アメリカでもそれほど知られた存在ではないようだ。
しかし1978年に来日し、そのステージの素晴らしさがファンの間で伝説的となるなど、日本での人気が高まり、それがアメリカやヨーロッパに逆輸入されるような形で少しずつ評価が高まっていった経緯があるらしい。
クレイのディープな歌声はもちろん、バンドとメンフィス・ホーンズの堅固で温かみのあるサウンドも素晴らしく、さらにストリングスのアレンジがまたいい。
佳曲が並び、最初から最後まで飽きさせない、ディープ・ソウル屈指の名盤である。
↓ 代表曲となった「愛なき世界で」。原題を直訳すると「あなたなしで人生を生きようとしています」。
↓ 1971年のジャッキー・ムーアの楽曲のカバー「プレシャス・プレシャス」。
(Goro)