ラッシュ/フォー・ラヴ (1992)

【90年代ロックの快楽】
Lush
For Love (1992)

可愛いから選んでるんじゃないのかよ、と言われたら、ぐうの音も出ない。

赤い髪が目立ったヴォーカルのミキ・ベレーニは、ハンガリー人ジャーナリストの父と、日本人ながらイギリスのTVで活躍していた女優の母を持つハーフだ。

黒髪のエマ・アンダーソンは腕の良いギタリストで、ソングライティングの能力も高い。

派手女が好きだった当時のわたしはミキちゃんが好みだったが、なんでも気が合った親友はエマちゃんが好みで、ここだけは合わなかったことを思い出す。ピンクレディー以来の伝統となった、男たちの「おまえどっち派?」というやつだ。

ラッシュは89年にインディー系レーベル、4ADからデビューした。コクトー・ツインズのメンバーによるプロデュースで、いかにもなドリーミーで浮遊感漂うサウンドだったが、時代が時代だったために、無理やりシューゲイザーの括りに入れらた感があった。

ミキが書いたこの曲は、1992年1月にリリースされた1stアルバム『スプーキー』からシングル・カットされ、全英35位、米オルタナ・チャート9位まで上昇した。コクトー・ツインズ風のドリーミーなスタイルから、ポップな歌メロを重視する方向へ転換したラッシュの新境地だった。ラッシュの中でもわたしが最も好きな曲のひとつだ。

まさか今どき「L」のほうのラッシュの記事を二度も書くとは、驚かれた読者の方もいるだろうが、わたしだって驚いている。

「つーか、可愛いから選んだんじゃないのかよ」と言われたらやっぱりぐうの音も出ないが。

Lush – For Love

(Goro)