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Lou Reed
“Transformer” (1972)
1970年8月にヴェルヴェット・アンダーグラウンドを脱退したルー・リードはその後、父親が経営するニューヨークの税理士事務所でタイピストとして働きながら、詩を書き溜めていた。
翌1971年にRCAレコードと契約を結び、彼は英ロンドンへ移住した。彼は自分がアメリカで一切評価されていないことをよく知っていたのだ。
ロンドンのスタジオで彼は、イエスのスティーヴ・ハウやリック・ウェイクマンら、あまり気の合わないセッション・ミュージシャンたちと、ヴェルヴェッツ時代に書いた残り物の曲を録音し、1972年5月に1stソロ・アルバム『ルー・リード』をリリースしたが、売れ行きは悪く、評論家にも無視された。
そんな彼に手を差し伸べたのが、『ジギー・スターダスト』をリリースしたばかりのデヴィッド・ボウイだった。
ボウイはヴェルヴェット・アンダーグラウンドの音楽に影響を受けており、ルー・リードを敬愛していた。ボウイは自身のバンドのギタリストであるミック・ロンソンと二人で、彼の2ndアルバムをプロデュースすることになった。1stアルバムのリリースからのまだ3ヶ月しか経っていない1972年8月に、彼らはロンドンのスタジオでレコーディングを開始した。
このときルー・リードには最高の曲があり、そしてこの時期のボウイはロック・シーンの先頭に立った勢いと冴えた感性と最新のサウンド・マニュアルと、最高のギタリストを携えていた。
それらは見事なまでにハマり、完璧なアレンジによって、ルー・リードの全キャリアのディスコグラフィの中でも、最もわかりやすく彼の音楽の魅力を伝える作品となった。
アルバム『トランスフォーマー』は1972年11月にリリースされ、全英13位、全米29位のヒットとなった。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 ヴィシャス
2 アンディの胸
3 パーフェクト・デイ
4 ハンギン・ラウンド
5 ワイルド・サイドを歩け
SIDE B
1 メイキャップ
2 サテライト・オブ・ラヴ
3 ワゴンの車輪
4 ニューヨーク・テレフォン・カンヴァセイション
5 アイム・ソー・フリー
6 グッドナイト・レイディズ
シングル・カットされたA5「ワイルド・サイドを歩け」は当時はタブーであった、トランスジェンダー、ドラッグ、男娼、口腔性交などを歌った歌詞でありながら、全英10位、全米16位のヒットとなり、ルー・リードの代表曲として広く知られている。
おネエでもおナベでも、売春婦でもヤリマンでも、マトモな生き方でなくても、なんだっていいじゃないか。
ヤバい道を歩いて生きていくのも悪くない。
(written by Lou Reed)
ある意味ふつうに生きていくことすら困難な、ややこしい星の下に生まれた人たちへの、静かなるエールのような歌だ。ウソっぽいところが少しもない、優しく美しい歌だ。
この曲はロックの数ある名曲の中でも、わたしが最も好きな曲のひとつだ。十指に入るかもしれない。
残念ながらわたしは面白くもなんともないノーマルな男だけれども、ついついワイルドな世界にあこがれてしまう。
他にも「ヴィシャス」「サテライト・オブ・ラヴ」「パーフェクト・デイ」など、ルー・リードの代表曲となった名曲が収録され、親しみやすいロックンロール「ハンギン・ラウンド」などもある、ちょっととっつきにくそうなイメージがあるルー・リードを初めて聴く人にもお薦めできる名盤だ。
↓ ルー・リードの代表曲となった名曲「ワイルド・サイドを歩け」。
↓ アルバムからの2枚目のシングル・カットで、全英10位のヒットとなった「サテライト・オブ・ラヴ」。
(Goro)