人類は退化した生き物である 〜ディーヴォ『頽廃的美学論』(1978)【最強ロック名盤500】#262

Q: Are We Not Men A: We Are Devo (Dlx)
⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#262
Devo
“Q:Are We Not Men? A:We Are Devo!” (1978)

イギリスやドイツならともかく、アメリカのオハイオ州なんてところからこういう珍奇なロック・バンドが出てきたことはなかなかの事件だったのではないか。

調べてみたら、バンド名のディーヴォは”De-Evolution”の略で、「人間は進化した生き物ではなくて、退化した生き物である」という思想が込められているらしい。

なるほど、そうだったのか。

過激で先鋭的で斬新なスタイルでありながら、しかし音楽的にはむしろプリミティヴに聴こえるような部分はそういう思想の現れなのか。

当時は彼らの、人間性を消してロボットのように振る舞うスタイルに、中一だったわたしは音楽の中身などよくわからなくてもえらくカッコよく見えたものだった。今あらためて映像を見ても、やはりあまりのカッコよさに笑いをコラえきれない。

本作は1978年8月にリリースされたディーヴォの1stアルバムである。プロデューサーはブランアン・イーノである。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 狂気の衝動
2 サティスファクション
3 プレイング・ハンズ
4 スペース・ジャンク
5 モンゴロイド
6 ジョコー・ホモ

SIDE B

1 偏執狂が多過ぎる
2 ガット・フィーリング
3 カム・バック・ジョニー
4 スラッピー
5 シリベル・アップ

アヴァンギャルドであることは間違いないのだけれども、意外と聴きやすいのもディーヴォの特徴だ。

感情と個性を剥ぎ取られた人間が音楽をやってみたら、カラカラに乾いた、無感動で妙に暴力的な音楽になってしまった、みたいにも聴こえる。それはある意味、最も醒めたパンクだ。

A2「サティスファクション」はローリング・ストーンズのカバーで、このとんでもないカバーで彼らはその名を一気に轟かせたと言える。このカバーを聴いた多くの人が、ディーヴォはストーンズをおちょくっていると受け取ったらしいが、フロントマンのマーク・マザーズボーは、「そんなつもりはまったくなかった」と語っている。

彼はこのカバーをアルバムに収録する許可を得るために、当時マンハッタンにあったローリング・ストーンズの事務所を訪れ、直接ミック・ジャガーにこれを聴かせた語っていると、米Yahooエンターテインメントのインタビューで語っている。

「曲の途中でミックが立ち上がり、彼らしいチキン・ダンスを踊り始めんだ」とマザーズボーは嬉しそうに語る。「とても良い印象を受けた」と彼は笑いながら、「その後ミックが、ストーンズのカバーの中で、僕らのカバーが一番好きだと言ってるのを読んだよ」とも話している。

さすがにそれはミックの冗談だと思うが。

アルバムは全米78位、全英12位まで上昇した。保守的なアメリカではもうひとつだけれども、新しい物好きのイギリスではいち早く支持を得たということだろう。

↓ アルバムのオープニングを飾る「狂気の衝動」。

↓ 彼らを一躍有名にした、賛否両論のカバー「サティスファクション」。

(Goro)

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