『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』 (1970)
The Rolling Stones
1966年に米国で発売されたライヴ・アルバム『ガット・ライヴ・イフ・ユー・ウォント・イット!』はストーンズの意思を無視して発売されたとしてメンバーには認められていないので、このアルバムが彼らにとっては初めての公式ライヴ・アルバムということになった。
ストーンズは迷走を始めた1967年以降、2年半以上ライヴ・ツアーをやっておらず、メンバーもファンもツアーの再会を望んでいた。その間にリリースされた『べガーズ・バンケット』『レット・イット・ブリード』は高く評価され、ストーンズは迷走期から脱出し、満を持してのツアー再開となった。
ツアーは1969年11月にスタートし、本アルバムは11月27,28日のNYのマディソン・スクエア・ガーデンの公演から収録されたものである。
SIDE A
- ジャンピン・ジャック・フラッシュ – Jumpin’ Jack Flash
- かわいいキャロル – Carol (Chuck Berry)
- ストレイ・キャット・ブルース – Stray Cat Blues
- むなしき愛 – Love In Vain (Robert Johnson)
- ミッドナイト・ランブラー – Midnight Rambler
SIDE B
- 悪魔を憐れむ歌 – Sympathy For The Devil
- リヴ・ウィズ・ミー – Live With Me
- リトル・クイニー – Little Queenie (Chuck Berry)
- ホンキー・トンク・ウィメン – Honky Tonk Women
- ストリート・ファイティング・マン – Street Fighting Man
『べガーズ・バンケット』と『レット・イット・ブリード』という直近2作からの8曲と、チャック・ベリーのカバーが2曲という構成になっている。
新加入の弱冠二十歳のギタリスト、ミック・テイラーが大活躍して、まさに新生ストーンズのお披露目といったところだ。
実は後からオーバーダビングした部分もあるそうだが、それがどこでなどと考え出しても醒めるだけなので、まあだいたいは生のライヴのままだろう、カッケーなー、サイコーだなーと思いながら聴いたほうが楽しいに決まっている。
いきなり「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」の最高バージョンから始まるので、テンション爆上がりだ。歌い終えてミックも興奮しながら「ズボンのボタンが吹っ飛んじゃったよ」などとのたまっている。
デビュー盤に収録されていたオリジナルより少しテンポを抑えながらもストーンズらしいグルーヴ感が嬉しい「かわいいキャロル」を挟んで、「ストレイ・キャット・ブルース」の狂暴な演奏に戦慄する。これは凄まじい。
さらにミック・テイラーのスライドギターにも聴き惚れる感動的な「むなしき愛」を挟んで、このアルバムのクライマックスとも言える、9分を超す「ミッドナイト・ランブラー」はこのバンドの最高の瞬間を記録した圧倒的な名演だ。
「悪魔を憐れむ歌」はオリジナルとは違うアレンジとなり、オリジナルの凶々しさはやや薄れてしまった気がするが、ここでもミック・テイラーの活躍は目立っている。
そして次の「リヴ・ウィズ・ミー」の超絶カッコいいアレンジにのけぞる。ある意味これが本アルバムの一番の聴きものと言えるかもしれない。
そして本アルバムで初披露となったチャック・ベリーの「リトル・クイーニー」のだらだらしたルーズな演奏(それがまた良い)を挟み、公演のラストはその時点で最新のヒット曲であり、ストーンズの代表曲に早速加えられたばかりの「ホンキー・トンク・ウィメン」で大盛り上がりだ。
アルバムの最後を飾るのはアンコールの「ストリート・ファイティング・マン」。バンド一丸となった熱い演奏でもう何度目かのテンションMAXだ。
本作は数あるストーンズのライヴ・アルバムの中でも最高傑作のひとつに挙げられるのは間違いない。ミック・テイラーとキースの白熱したギターの絡み合いは、狂暴な獣同士の格闘のようでもある。
2009年12月には、40周年記念デラックス・エディションとして、未発表ライブ・テイク5曲と、前座を務めたB・B・キング、アイク&ティナ・ターナーの演奏も収めた3枚組CD+DVDがリリースされた。
前座の方は正直わたしにはどうでもいいが、追加された5曲は演奏も良く、嬉しいボーナス・トラックだ。
- 放蕩むすこ – Prodigal Son (Robert Wilkins)
- ユー・ガッタ・ムーヴ – You Gotta Move (Fred McDowell/Rev. Gary Davis)
- アンダー・マイ・サム – Under My Thumb
- アイム・フリー – I’m Free
- サティスファクション – (I Can’t Get No) Satisfaction
特にキースのアコギの伴奏で演奏された1 と2が好きだ。別に超絶技巧なんかないけれども、音に味があるというか、心に気持ちよく音が当たる、そんな演奏だ。
(Goro)