
米ワシントン州シアトル出身のマッドハニーは、地元のインディ・レーベル〈サブ・ポップ〉に所属していたグリーン・リヴァーという伝説的なバンドがふたつに分かれて出来たバンドだ。もうひとつのバンドは、パール・ジャムである。
レーベルの先輩にはサウンドガーデンがいて、翌年にはニルヴァーナもこのレーベルからデビューした。その2年後に訪れたグランジ・ブームの際には、この大田舎のインディ・レーベルがその源流であることが知られ、世界中から注目を浴びることになった。
マッドハニーはニルヴァーナの兄貴分的な存在で、両バンドはとても仲が良く、音楽的にも方向性を同じくし、互いに影響を受け合っていた。
グランジの先駆者としてマッドハニーは評価され、彼らもまたブームの波に乗ってはいたが、しかしニルヴァーナやパール・ジャムのようには売れなかった。全米チャートに入ったこともないし、ヒット曲と言える曲もない。
しかし(本人たちはどう思っているか知らないが)、彼らの音楽性や活動の仕方からして、一時の流行で身の丈以上の売れ方をしなくて正解だったような気がする。
ヒット曲はないかもしれないが名曲はあるし、パンクやハード・ロックをごた混ぜにした刺激的なサウンドのガレージ・ロックは重すぎないのも魅力で、他の重量感のあるグランジ勢にはないスピード感と親しみやすさを感じる。
グランジではニルヴァーナよりマッドハニーのほうが好き、という人もいるらしいけれども、それも頷けるように、彼らの親しみやすい魅力、そしてシンプルでエネルギッシュなカッコ良さはロック界にいつだって必要な存在であり、地に足の付いた野生種のロック・バンドだった。
以下はわたしがお薦めする、最初に聴くべきマッドハニーの必聴名曲5選です。
Touch Me I’m Sick
サブ・ポップからリリースされたデビュー・シングル。ニルヴァーナがデビューする1年前、グランジ・ブームが巻き起こる3年前に、すでに完成されたグランジ・スタイルでその先鞭を付けていたことがわかる楽曲だ。
If I Think
1988年10月にリリースされた7曲入り1stEP『スーパーファズ・ビッグマフ (Superfuzz Bigmuff)』収録曲。スローで静かな部分と激しく爆発する部分を持つ、後のグランジ・ロックの象徴的なスタイルとなった、先駆的楽曲。
Let It Slide
2ndアルバム『良い子にファッジ(Every Good Boy Deserves Fudge)』からのシングル。この年からグランジ・ブームが始まって世界的な注目を浴び、この曲が初めてイギリスのチャートで60位に入った(本国アメリカのチャートには入らず)。
これぞガレージ・ロックのお手本と言うべき、シンプルでありながらゾクゾクするほどカッコいい名曲だ。
Good Enough
2nd『良い子にファッジ』収録曲。それまでの攻撃的でパンキッシュな作風から一転、肩の力が抜けた、まるでフォーク・ソングのような親しみやすいメロディが意表を突いた曲だ。サウンドは耳障りなほどラウドでも、メロディを重視するというスタイルは、グランジ・ブームの特徴でもあったのだ。
Suck You Dry
3rd『ピース・オブ・ケイク』からシングル・カットされ、嵐のようなグランジ・ブームにも背中を押され、米オルタナティヴ・チャート23位と、全キャリア中最初で最後の本国でのチャート・インとなった代表曲だ。この曲もまた、ストゥージズと比較しても全然負けていない、ガレージ・ロックの名曲だ。
マッドハニーのベスト盤は、2000年にリリースされた2枚組CD『March to Fuzz』がある。DISC1が22曲入りベストで、DISC2がレア・トラック集となっている。
入門用にマッドハニーのオリジナル・アルバムを最初に聴くなら、2nd『良い子にファッジ (Every Good Boy Deserves Fudge)』がお薦めだ。
(Goro)

