⭐️⭐️⭐️⭐️
The Jam
“Sound Affects” (1980)
「ああ、これはもうスタカンだな」
「これまはまだちょっとジャムか」
「これはジャムだな、と思わせての後半スタカンか」
などと、アルバムを聴きながらついそんな風に思う。
ジャムの転換点であり、ポール・ウェラーにとってはスタイル・カウンシルへの布石となったアルバムである。
ポール・ウェラーは「俺らの『リボルバー』だと思ってる」(NME誌 1982年)とビートルズの転換点となった実験色の濃いアルバムを挙げているが、それは何も収録曲の「スタート」が「タックスマン」にそっくりというだけではないだろう。この当時ポール・ウェラーはビートルズとモータウンを聴きまくっていたというから、大いに影響され、意識的に実験的で新しい方向性のアルバムを作ったに違いない。
サウンドは見事に洗練されながらも、ストリートの匂いや怒りのエネルギーは失われていない、ポール・ウェラーのファンからすれば、ジャムの良さもスタカンの良さも両方味わえて二度美味しい、最高のアルバムに違いない。
本作はザ・ジャムの5枚目のアルバムとして1980年11月にリリースされ、過去最高位となる全英2位となるヒットとなった。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 プリティー・グリーン
2 マンデー
3 ディファレント・ナウ
4 セット・ザ・ハウス・アブレイズ
5 スタート
6 ザッツ・エンターテイメント
SIDE B
1 ドリーム・タイム
2 マン・イン・ザ・コーナー・ショップ
3 ミュージック・フォー・ザ・ラスト・カップル
4 ボーイ・アバウト・タウン
5 スクレイプ・アウェイ
ベースが跳ね、歌い出している。ドラムは勢いに任せて叩きまくるのをやめ、間を活かして音楽に深みを出している。サウンドが立体的になって、音楽が生き生きとした充実感に満ちている。
まるでメンバー・チェンジしたのかと思うほどの変わりようだが、ベースはあのブルース・フォクストンだし、ドラムもあのリック・バックラーだ。飛躍的に成長を遂げていたのはポール・ウェラーだけではなかった。
シングル・カットされたA5「スタート」は全英1位の大ヒットとなった。そしてA6「ザッツ・エンターテイメント」はシングル・カットこそされなかったものの、その後ジャムの代表曲のひとつとして愛され続けている。
英国の貧しい労働者階級のありふれた日常を、皮肉めいた言葉「That’s Entertainment」と表現する。ありふれた日常のなんでもない瞬間が、哀しみとも喜びともどちらにも取れ、絶望にも希望にも取れる、そんな深いマジックに包まれた名曲だ。わたしがジャムの中でも最も好きな曲のひとつだ。
↓ 全英1位となったシングル「スタート」。ビートルズの「タックスマン」のベースラインをそのまま使って話題になった。
↓ ジャムとしては異色と言える、アコースティック・ギターを前面に据えて独特のサウンドを作り出した「ザッツ・エンターテイメント」。
(Goro)
記事が気に入ったら「いいね」をクリックお願いします。↓