The Contortions
Contort Yourself (1979)
サックス兼キーボード兼ヴォーカリスト兼ソングライターの、ジェームズ・チャンス率いるコントーションズは、1977年にニューヨークで結成したバンドだ。
この曲は彼らの1stアルバム『Buy』の収録曲だ。
ジェームズ・チャンスは元々、セロニアス・モンクやチャーリー・パーカーに影響を受けたジャズ奏者だったが、同時にヴェルヴェット・アンダーグラウンドやストゥージズにも影響を受けたそうで、こんな一風変わった前衛パンクスに育ったというわけだった。
コントーションズのレコード・デビューは、この1st以前に、ブライアン・イーノがプロデュースした有名なコンピレーションLP『ノー・ニューヨーク(No New York)』で果たしており、4曲が収録されていた。
彼らは『ノー・ニューヨーク』に収録された他のバンドなどとともに〈No Wave〉という呼称で括られることになる。
パンクからニュー・ウェイヴへとロック・シーンが変わりつつある時代に、ニュー・ウェイヴのアーティストたちを商業主義的であると批判し、初期パンクのD.I.Y.精神とストイックなアート志向で、商業主義的でない方向性で活動した一派として知られる。
いつの時代でもそうだが、元々アンチだったものが主流になると、さらに次なるアンチが生まれるものだ。
コントーションズの音楽は、フリー・ジャズをパンキッシュに仕上げたような、アグレッシヴな疾走感とギサギザのビート、乾いたスカスカのサウンドがクールで面白い。アート志向と言ってもやけに暴力的な迫力はやはりパンク的である。
メロディが豊かで美しいハーモニーの名曲ばかり聴いていて、満腹で胃がもたれて来たときに聴いたりすると、すっきりリフレッシュするような気もする。ルッコラみたいなものかもしれない。
もちろんセールス的には成功しなかったし、今も聴き継がれているとは言えないが、彼らをはじめとする〈No Wave〉の一派は、NYパンクから生まれた最後の小さなモンスターだった。
大怪獣ゴジラみたいに大暴れはしなかったけれども、その小さなモンスターに魅かれて影響を受けた若者たちも少数ながら存在した。
そのひとりが、大学を辞めてニューヨークに移り住んできたサーストン・ムーアであり、後に彼はソニック・ユースを結成するのだ。
(Goro)