
Suzanne Vega
Luka (1987)
スザンヌ・ヴェガは、米ニューヨーク出身のシンガー・ソング・ライターだ。
1987年にリリースされた2ndアルバム『孤独 (ひとり)』からシングル・カットされた「ルカ」が全米3位の大ヒットとなり、一躍世界的な名声を得た。
この歌の主人公である少年、ルカは、彼が住むアパート部屋の階下に住む少年に出会い、こう言うのだ。
「もしも、夜中に争う声や音が聞こえても、何かトラブルが起こってるって思っても、そのことを僕に訊いたりしないでね」
両親から虐待を受けている少年の視点から語られた歌詞がセンセーショナルであり、社会問題を扱った挑戦的なポップスとして、高く評価された。
スザンヌ・ヴェガはスパニッシュ・ハーレムで育ち、日常的にそんな光景を見ていたそうだ。
今なら発覚すれば警察沙汰にもなる児童虐待だが、われわれが子供だった昭和の時代は「家庭内のしつけの問題」としてお互い見て見ぬふりをしたり、子供を痛めつけ、追い込むようなやり方を「スパルタ教育」などと、むしろ厳格で立派なことのように言う傾向すらあったものだ。
日本でもヒットしたこの曲を聴いて、わたしもすぐに好きになった。わたしが21歳の頃のことだ。
一聴するとポップで親しみやすいメロディの曲だけれども、しかしどこか、深い苦悩が隠れているような切迫感があった。
その歌詞の内容を知り、ああ、世界中どこでも同じなんだな、と思ったものだった。そして「そのこと」がついに世界に向けて歌われているということに感動も覚えた。
わたしも小学生の頃、家の中で日常的に暴力を受けていたからだった。
それについて書こうかと思うけれども、長くなりそうなので、続きはまた明日。
(Goro)