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Richard & Linda Thompson
“I Want To See The Bright Lights Tonight” (1974)
英ロンドン出身のリチャード・トンプソンは、1969年にデビューしたフォーク・トラッド・バンド、フェアポート・コンヴェンションの創設メンバーだった。
フェアポート・コンヴェンションは、ギター、ベース、ドラム以外に、ピアノ、フィドル、マンドリン、リコーダーなども使用する英国トラッド色の濃いバンドだ。リチャード・トンプソンはそのバンドのソングライターであり、ギタリストだった。
リチャード・トンプソンは71年にフェアポートを脱退し、奥さんのリンダとデュオを組んで1974年4月に本作『アイ・ウォント・トゥ・シー・ザ・ブライト・ライツ・トゥナイト』を発表する。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 ホェン・アイ・ゲット・トゥ・ザ・ボーダー
2 カルヴァリー・クロス
3 ウイザード・アンド・ダイド
4 アイ・ウォント・トゥ・シー・ザ・ブライト・ライツ・トゥナイト
5 ダウン・ホェア・ザ・ドゥランカーズ・ロール
SIDE B
1 ウイ・シング・ハレルヤ
2 ハズ・ヒー・ガット・ア・フレンド・フォー・ミー
3 ザ・リトル・ベガー・ガール
4 ジ・エンド・オブ・ザ・レインボウ
5 ザ・グレイト・ヴァレリオ
実のところ、わたしはフェアポート・コンヴェンションのアルバムにはそれほど気に入ったものはないのだけれども、このアルバムはとても気に入った。ずいぶん長いあいだ、気に入って聴いていたものだ。
英国トラッドと米国カントリーの要素もある音楽性だが、明るいポップスの味わいもあれば、ダークなロックの凄みもある。えらく明るい曲とやたら暗い曲がちょうど半々ぐらいの割合で本作には収められていて、当時の英国の社会不正や貧困、ホームレス、希望の見えない未来など、社会の暗部が歌われている楽曲もある。
若い頃は、A1「ホェン・アイ・ゲット・トゥ・ザ・ボーダー」やB1「ウイ・シング・ハレルヤ」のようなトラッド調ながらポップで明るいものを好んで聴いていたが、今回あらためて聴いてみると、A2「カルヴァリー・クロス」やA5「ダウン・ホェア・ザ・ドゥランカーズ・ロール」、B2「ハズ・ヒー・ガット・ア・フレンド・フォー・ミー」などのやたらと暗い、ダークな曲のほうにより魅かれるようになった。まあ、要は明るい曲も暗い曲も両方良いわけで、つまり完璧なアルバムということだ。
中でもわたしが昔から一番好きなのはタイトル曲のA4「アイ・ウォント・トゥ・シー・ザ・ブライト・ライツ・トゥナイト」だ。
「毎日の仕事に、ほんとうにうんざり。さあ週末がやってきた。悩みごとなんか忘れて楽しもう。タクシー代を持ってるなら申し分なし、今夜は華やかなネオン街が見たいんだ」
そんな歌詞だ。
わたしは薄給の身なのでそうそう夜の街に繰り出すわけにもいかないけれども、しかしだいたい毎日そんな気分ではある。いつ聴いても共感するし、実際に夜の街に繰り出すときはたいていこの歌を口ずさんでいたものだ。
↓ 名曲「アイ・ウォント・トゥ・シー・ザ・ブライト・ライツ・トゥナイト」
↓ 不吉な前兆を予言しているかのような、ダークな魅力の「カルヴァリー・クロス」。
(Goro)