⭐️⭐️⭐️
PJ Harvey
“Dry” (1992)
PJハーヴェイは、イギリスの女性シンガーソングライター、ポリー・ジーン・ハーヴェイ率いる3人組のバンドだ。本作は1992年3月にインディーズからリリースされた彼らの1stアルバムである。
発売からいくらも経たないうちに、カート・コバーンが雑誌の企画でお気に入りのアルバム20枚のなかに本作を挙げたことで注目を浴び、ブレイクにつながった経緯があった。
初めて聴いたときは、こりゃ史上最強の女ロッカーが現れたな、と思ったものである。
彼女以前の最強女ロッカーと言えばやはりパティ・スミスで、そのアグレッシヴなトガり具合とクールなアート志向が同居する様はよく似ているが、情念の濃さという点ではPJの方が上回っている気がする。パティ・スミスがパンクの女王なら、PJハーヴェイはオルタナの女王といった感じだ。
当然ながら、女性の可愛らしさやセクシーさを売りにするようなタイプではもちろんない。
PVや写真ではわざとのように露出の多い挑発的な衣装を着ていたりもするのだけれど、エロティックな感じはしない。
デビュー当時からけっこう簡単に脱ぐ人で、1stアルバムの裏ジャケットもなぜか上半身裸だし、雑誌の表紙でも裸になったりしているけれど、それが彼女の攻撃的表現であり、アート的表現のようにも感じる。ジム・モリソンやイギー・ポップが上半身裸になるのと同じような感覚なのかもしれない。
【オリジナルCD収録曲】
1 オー・マイ・ラバー
2 オー・ステラ
3 ドレス
4 ビクトリー
5 ハッピー・アンド・ブリーディング
6 シーラ・ナ・ギグ
7 ヘア
8 ジョー
9 プランツ・アンド・ラグス
10 フォンテイン
11 ウォーター
たった5千ドルの低予算でレコーディングされ、ポリーはプロデューサーに「できる限り生々しく、飾らない音にして」と要求したという。
オーバー・ダビング少なめの、生々しいサウンドは、荒々しく、緊張感に満ちている。狂気の一歩手前のような暗い情念の噴出と気迫に、圧倒される。
ポーリーは本作について「あのアルバムは、私が女性としてどう見られ、どう生きるかの闘いだった」と語っている。(メロディ・メーカー誌 1992年)
歌詞にはかなりエグい性的な表現があったりして、それを男ロッカーがやるとアホ丸出しにしか聴こえないけれども、PJがやるとクールで知性的に思えるから不思議なものだ。
↓ デビュー・シングル「ドレス」は衝撃的なカッコ良さだった。
↓ 2枚目のシングル「シーラ・ナ・ギグ」は米オルタナチャート9位まで上昇するヒットとなった。
(Goro)


