⭐️⭐️⭐️
Pantera
“Vulgar Display Of Power” (1992)
ジャケットがもの凄いので、じゃあ音はどんなもんかいな、などと興味本位で聴いてみたら、想像を超えてきた。グルーヴ・メタルと言うらしいが、ちょっと聴いたことがないぐらいの、衝撃のサウンドだ。
パンテラは、米テキサス州ダラスに住むアボット兄弟、ドラムのヴィニー・ポール(兄)とギターのダイムバッグ・ダレル(弟)を中心に80年代前半に結成された。
80年代はグラム・メタルに近いスタイルで活動したが商業的に成功せず、87年にはヴォーカルがフィル・アンセルモに替わった。
92年2月に6作目となる本作をリリース。オルタナティヴ・ロックの隆盛に呼応するかのように、フィルは長髪をバッサリ切ってスキンヘッドにし、それまでのハイトーン・ヴォイスを封印して、ハードコア風のヴォーカル・スタイルに変えた。ギターの音にも重量感を加え「グルーヴ・メタル」と呼ばれる独自のスタイルを誕生させることになる。
【オリジナルCD収録曲】
1 マウス・フォー・ウォー
2 ア・ニュー・レヴェル
3 ウォーク
4 ファッキング・ホスタイル
5 ディス・ラヴ
6 ライズ
7 ノー・グッド (アタック・ザ・ラディカル)
8 リヴ・イン・ア・ホール
9 レギュラー・ピープル (コンシート)
10 バイ・ディーモンズ・ビー・ドリヴン
11 ホロウ
切れ味が凄いギターのリズムにベースとドラムがシンクロして、重量級のグルーヴを生み出す。ザクザクザクザクと土を掘り進む掘削機のようなバンド・サウンドだ。推進力がものすごく、あっという間にトンネルでも開通させそうな勢いである。
全米アルバムチャートでは44位まで上昇し、その後も長く売れ続けて、米国だけで230万枚を超すヒットとなった。
前年のメタリカの5thアルバム『メタリカ』が80年代のスラッシュ・メタルとは一線を画すスタイルで賛否両論の話題となったが、本作はさらに一歩も二歩も進み、ヘヴィ・メタルの歴史にひとつの区切りをつけたと言っていいだろう。
それまでのヘヴィ・メタルは過去のスタイルという印象になり、この『俗悪』以降はオルタナティヴ・ロックとも親和性のあるサウンドやスタイルが主流となり、新たに〈ヘヴィ・ロック〉と呼ばれて、90年代後半に最盛期を迎えることになる。
↓ 暴力的なイントロで始まるオープニング・トラック「マウス・フォー・ウォー」。シングル・カットされて全英73位と、彼らにとって初めてチャート入りしたシングルとなった。
↓ 全英35位まで上昇した「ウォーク」。最も売れたシングルとなり、代表曲となった。
(Goro)


