Dinosaur Jr
“Where You Been” (1993)
やっと、まともな音で聴けた。
当時はそんなふうに思ったものだ。
3枚目の『BUG』までのインディーズ時代の音の悪さはまあ仕方ないにしろ(あれはあれで味もあった)、メジャーに移籍した4枚目の『グリーン・マインド』は、インディーズ時代のエンジニアをそのまま使ってメジャーのスタジオで録音したために、勝手がわからず失敗。楽曲は良いのに、なんだか薄っぺらく、迫力に欠けるサウンドになってしまった。
その失敗を教訓に、5枚目の本作では、メジャーの高級スタジオに慣れたエンジニアを雇って録音に臨み、クリアで迫力のある音で、ようやく実物大の恐竜の姿にまみえるアルバムとなったのだ。
本作は1993年2月にリリースされ、全米50位、全英10位と、キャリア最大の商業的成功作となった。
【オリジナルCD収録曲】
1 アウト・ゼア
2 スタート・チョッピン
3 ホワット・エルス・イズ・ニュー
4 オン・ザ・ウェイ
5 ノット・ザ・セイム
6 ゲット・ミー
7 ドローイングス
8 ハイド
9 ゴーイン・ホーム
10 アイ・エイント・セイン
ノイズとメロディが両立し、轟音ギターと抒情性が両立するものだという新しい感動をダイナソーJrは与えてくれた。
フロントマンのJ・マスシスがプロデューサーも務めた本作は、「このアルバムでは、とにかく“音の壁”を作りたかった。でも、ただの轟音じゃなくて、感情が見える壁にしたかった」(ギター・ワールド誌 1993年) と語っている。
曲が良いし、ギター・プレイも素晴らしい。相変わらずなのは寝ぼけたようなヴォーカルだけれど、これはこれで良かったのだ。まさに完成系のダイナソーJrである。
本作の白眉は、シングル・カットもされた「ゲット・ミー」だ。
ニール・ヤングの影響の色濃いスロー・テンポの曲調で、J・マスシスの魂のギター・ソロが炸裂する。
いつもながら、今起きたばかりのトリケラトプスのような寝ぼけたヴァースから始まり、徐々に覚醒していくギターに引っ張られ、コーラスではプテラノドンのような美しい飛翔にハッとさせられる。
エンディングの怒涛のようなギター・ソロは、肉食竜ティラノサウルスと化し、草食竜たちを踏んづけ、噛み千切り、ブン回して放り投げる、阿鼻叫喚の大暴れに圧倒される。
このジュラ紀のパワーに勝てるギタリストは同世代にはいなかった。まさに無敵の恐竜だった。
“Rank Your Records”という2016年のWeb記事でマスシスは、ダイナソーJrの全アルバムをランク付けしているが、本作を3位に挙げ、以下のようにコメントしている。
「僕らは本当に一生懸命頑張っていたし、やりたいことをうまく実現できた」。
↓ のっけからギターを弾きまくるイントロもかっこいいオープニング・トラック「アウト・ゼア」。少し憂いを含んだ歌メロも、いかにもマスシスらしい。
↓ アルバムのハイライトとなった名曲「ゲット・ミー」。
(Goro)


