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【最強ロック名盤500】#206
David Bowie
“Diamond Dogs” (1974)
ボウイが『ジギー・スターダスト』のイメージから脱却するため、当時のバンド、スパイダース・フロム・マーズも解散し、新たな方向性を手探りしていた次期の作品だ。そのため当時の評論家は「迷走」とも捉えたらしく、以後も賛否が相半ばするアルバムで、まずボウイの代表作として挙げられることは少ない。
しかしわたしは昔からこのアルバムが好きだ。
まずタイトルがカッコいいし (意味はわからんけど)、ジャケットもいい。裏ジャケに絵が繋がっていて、ボウイの下半身が犬になっているのだ。これがまたキモカッコよくて好きだ。
もちろん、中身だってすごく良い。
本作は1974年5月にリリースされ、評論家の不評なんてものともせず、全英1位、全米5位と、ボウイのアルバムとしてはそれまでで最高のセールスを記録した。いつだって、評論家よりもリスナーの方が正しいものである。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 未来の伝説
2 ダイアモンドの犬
3 美しきもの
4 キャンディディット
5 美しきもの (リプライズ)
6 愛しき反抗
SIDE B
1 ロックン・ロール・ウィズ・ミー
2 死者の世界
3 1984年
4 ビッグ・ブラザー
5 永遠に周り続ける骸骨家族の歌
評論家の不評は、ミック・ロンソンが抜けてギタリストがいなくなったため、ボウイがギターをひとりですべて弾いていることによることが大きい。ボウイは猛練習して臨んだことを後年明かしているが、評論家は単に「上手くない」としか思わなかったようだ。
たしかにミック・ロンソンは素晴らしいギタリストだったけれども、ここでのボウイのギターはやや荒っぽいのがパンクっぽくてわたしは嫌いではない。
シングル・カットされ、全英5位のヒットとなった「愛しき反抗 (Rebel Rebel)」は、ストーンズ風のギター・リフが特徴的だが、後に「グラム・ロックへ別れを告げた、パンクの原型」とも評されている。
これもストーンズの「ブラウン・シュガー」風のタイトル曲「ダイアモンドの犬」は最高だし、バラードのB1「ロックン・ロール・ウィズ・ミー」も印象深い。
アルバムの後半にはB3「1984」、B4「ビッグ・ブラザー」といったジョージ・オーウェルのディストピア小説『1984』に関連した曲があるけれども、これは当時ボウイが『1984』の映画化の計画を進めていて、その主題歌と挿入歌として書いたものだ。
しかし映画化はオーウェルの未亡人が許可を出さず頓挫したため、本作に収録されることになった。この2曲はしかしアルバムのクライマックスを形成し、ラストの不思議な魅力を持つ「永遠に周り続ける骸骨家族の歌」で楽しく幕が下される。
もう何年かすると髪をおっ立て、鋲の付いた革ジャンを着るようになる英国のパンクスの卵たちは、この当時のデヴィッド・ボウイに憧れていた者が多いという。タイトル曲の猥雑なロックンロールの感じや、ダークで終末的な世界観、反抗や暴力といったテーマ、そしてボウイの荒っぽいギターにも影響を受けた可能性があるという。
なにしろアルバムは冒頭から「これはロックンロールではない!これは大量虐殺だ!」というワクワクするような宣言と共に始まるのだ。
↓ 本作の白眉である猥雑なロックンロール「ダイアモンドの犬」。
↓ 全英5位のヒットとなった「愛しき反抗」。
(Goro)