⭐️⭐️⭐️
Aztec Camera
“High Land, Hard Rain” (1983)
スコットランドのグラスゴー出身のアズテック・カメラは、ヴォーカル&ギター兼ソングライターのロディ・フレイムを中心に結成されたバンドだ。
当時19歳のロディ・フレイムが弾く鮮烈なアコースティック・ギターを前面に出した爽快なバンド・サウンドと瑞々しい歌声は、”ネオ・アコースティック”と呼ばれる新たな潮流を生んだ。
ロディ・フレイムのギターは、ジャズやラテン、ボサノヴァ、R&Bなど多彩な音楽の影響を受けた、当時としては異色のスタイルだった。
彼は次のように語っている「10代の頃、僕はジャズギターに夢中だった。ウェス・モンゴメリーやジョアン・ジルベルトにね。でも歌詞はエルヴィス・コステロを意識していた」(ガーディアン誌インタビュー2001年)。
本作は1983年4月にインディ・レーベル、ラフ・トレードからリリースされた1stアルバムだ。英インディ・チャートで1位になり、ネオ・アコースティックの代名詞的作品であると同時に”スコティッシュ・ポップ”の先駆的作品としてもロック史に残る名盤となった。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 思い出のサニー・ビート
2 ザ・ボーイ・ワンダーズ
3 ウォーク・アウト・トゥ・ウィンター
4 ザ・ビューグル・サウンズ・アゲイン
5 ウィ・クッド・センド・レターズ
SIDE B
1 ピラー・トゥ・ポスト
2 リリース
3 ロスト・アウトサイド・ザ・トンネル
4 バック・オン・ボード
5 ダウン・ザ・ディップ
「思い出のサニー・ビート」というよくわからない邦題のA1は、恋愛におけるすれ違いや無神経さを歌った曲だが、英国らしからぬ、カラリと晴れたビーチを思わせるようなポップなサウンドとメロディで、英インディ・チャート1位を獲得した代表曲だ。
ロディ・フレイムはいかにも賢そうで、見た目もシュッとしていて女子人気が高かったことが当時から若干気に食わなかったが、今あらためて聴くと、ソングライターとしての才能も驚くほかないし、伸びやかな歌声も鮮やかなギタープレイも神がかって聴こえる。
当時の暗い暗い英国インディ・シーンに、カラッと晴れ渡った高気圧を連れてきてジメジメした空気を一掃したような、画期的な作品だった。
日本でも80年代のいわゆる”渋谷系”と呼ばれたミュージシャンたちに絶大な影響を与えたアルバムだ。
↓ 英インディ・チャート1位のヒットとなった代表曲「思い出のサニー・ビート」。
↓ 本作でわたしが一番好きな「ザ・ボーイ・ワンダーズ」。少年が現実に目覚めていくほろ苦さを描いた青春ソングだ。
(Goro)