
Alan Jackson
Chattahoochee (1992)
そんなわたしも成長したので、若い頃はさっぱりわからなかったカントリーも多少は嗜むようになった。
他にも最近は、50年間も嫌いだった紅しょうがも好きになった。
わたしの肉体と精神は、今も刻々と変貌を遂げているのである。
それをただの老化という人もいるけれども。
アラン・ジャクソンは、アメリカで最も売れているシンガーのひとりで、カントリー・ロックを代表するようなアーティストのはずだが、日本語のウィキペディアすら無いこの落差には驚かされる。
カントリー・ミュージックは民族音楽なのか、と思うほどアメリカ以外では聴かれていないのだなあとあらためて思う。
ジョージア州出身のアラン・ジャクソンは、1989年に34歳でデビューした遅咲きだ。
彼の書く歌は、その当時米国を揺るがすほどの人気を集めていたカントリーの新世代アーティスト、ガース・ブルックスやクリント・ブラックなどより、もっとトラディショナルでレイドバックしたものだった。
しかし、2枚目のシングルがカントリー・チャート3位とヒットしたのをきっかけに成功し、その後30年近くのあいだに、6,000万枚のアルバムを売り上げ、カントリー・チャートで35曲のNo.1ヒットを世に送り出した。
しかし、彼はこの成功に対して戸惑いと不安を隠さない。
口数が見少なく、謙虚で、自分を蔑みがちで、スポットライトを浴びていることを心地良く思っていない彼は、きっと「カントリー界の皇帝」などと呼ばれていることについても嬉しく思っていないだろう。
彼はインタビューにこう答えている。
「僕はいつもヒット・チャートは見ないように努めてきたし、曲を書く時やレコーディングの時は、ラジオでのエアプレイやアワードの事は考えないようにしていた。ただ僕の音楽に変わらない誠実さを保つ事、僕が愛する事や僕のファン達が聴きたいと思う事に努めてきたんだ」
この「チャッタフーチー」は、アラン・ジャクソンが初めてゴールドディスクを獲得した最大のヒット曲であり、彼の代表曲だ。ギターの硬い音色が素晴らしい、爽快で、晴れやかな気持ちになる曲である。
90年代以降のカントリー・ロックのシンプルな原点のようでもあり、トラディショナルでもあり、初期のロックンロールを思い出させる。
いろんなものが変わっていくのは当たり前だけど、変わらないものがあるというのもいいものだ、なんて思わせる音楽でもある。
(Goro)