奇跡の復活作 〜エアロスミス『パーマネント・ヴァケイション』(1987)【最強ロック名盤500】#323

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⭐️⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#323
Aerosmith
“Permanent Vacation” (1987)

「奇跡」というオーラが出まくっているアルバムだ。

70年代に一度黄金期を築いたエアロスミスは80年代に入ると、当時のハード・ロック・バンドの典型的な破滅パターンそのままに、ドラッグにぐっしょり浸かり、人間関係が崩壊してメンバーは続々と脱退し、発表するアルバムも精彩を欠き、迷走し、一度は完全にシーンから消えてしまったのだった。

メンバー全員が麻薬中毒で更生施設に入院するというどん底まで経験し、そこから這い上がり、執念でつくりあげたアルバムが本作である。

よく出来たアルバムだ。
ボン・ジョヴィのプロデュースで大当たりした、ブルース・フェアバーンの手になるサウンド・プロデュースが見事に成功している。

もともとキャッチーな曲が書けるエアロスミスというバンドにふさわしい、アグレッシヴなのに聴きやすいこのサウンドは、エンターテインメント性を前面に押し出し、まるで撥水性ワックスでていねいに磨き上げられた高級車のように、ツヤツヤと輝いているようだ。大音量で聴くとまた立体的なサウンドが楽しく、意外にうるさく感じない。

楽曲もバラエティに富んでいて、最後まで飽きさせない。サウンド・プロデュースの成功と楽曲のクオリティが噛み合った、それだけでもほとんど奇跡のような名盤と言える。

本作は1987年8月にリリースされ、全米11位と、エアロスミスにとって、10年ぶりのヒット作となった。

【オリジナルCD収録曲】

1 ハーツ・ダン・タイム
2 マジック・タッチ
3 ラグ・ドール
4 シモライア
5 デュード
6 セント・ジョン
7 ハングマン・ジューリー
8 ガール・キープス・カミング・アパート
9 エンジェル
10 パーマネント・ヴァケイション
11 アイム・ダウン
12 ザ・ムーヴィー

本作からは過去最大のヒットとなった「エンジェル」(全米3位)、「デュード」(同14位)、「ラグ・ドール」(同17位)と3曲のヒット曲が生まれた。

70年代からのエアロファンからは賛否両論あったアルバムだが、背水の陣で復活を賭けるバンドにとってみればこのタイミングで「エンジェル」のようなMTVウケするヒット曲は喉から手が出るほど欲しかっただろうし、70年代のようなハード・ロック・アルバムをここでまた出していたら、たぶん永久に復活することなく、消え去っていただろうと思う。そもそも10年の低迷の後に復活を遂げて世界的な成功を収めたバンドなんて、後にも先にも例がないのだ。

エアロスミスはこのアルバムの成功によって奇跡の復活を果たし、以降はアメリカを代表するロック・バンドとして君臨し続けることになる。

内容の素晴らしさと併せて、これほど「奇跡のアルバム」と呼ぶのにふさわしい作品もないだろう。

↓ 11年ぶりのトップ20ヒットとなった「デュード」。このヒットが復活の狼煙となった。

↓ 全米3位と過去最高のヒットとなった、いかにも80年代風のバラード・ソング「エンジェル」。

(Goro)

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