ヘヴィ・メタルの聖典 〜アイアン・メイデン『魔力の刻印』(1982)【最強ロック名盤500】#296

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⭐️⭐️⭐️

【最強ロック名盤500】#296
Iron Maiden

“The Number of the Beast” (1982)

ハード・ロックやヘヴィ・メタルの世界ではバンドのヴォーカリストが替わるということがわりと頻繁に行われ、リスナーもわりとすんなり受け入れる印象がある。

もしもミック・ジャガーが脱退して別のヴォーカリストに替わったらもはやストーンズではなくなってしまうだろうし、U2のヴォーカルがボノじゃなくなったら、オアシスのヴォーカルがリアムじゃなくなったら、とても聴く気にはなれないものだが、HR/HMの界隈ではなぜか平然とヴォーカルが変わるし、キャリアの長いバンドともなると歴代ヴォーカリストが何人もいたりする。

そしてその交代劇によってバンドがさらなる成功を収めたりもする。

1982年3月にリリースされたアイアン・メイデンの3rdアルバム『魔力の刻印』は、ヴォーカルがブルース・ディッキンソンに替わり、結果的に大成功を収めた。

【オリジナルLP収録曲】

SIDE A

1 侵略者
2 吸血鬼伝説
3 ザ・プリズナー
4 アカシア・アベニュー22

SIDE B

1 魔力の刻印
2 誇り高き戦い
3 暗黒の街
4 審判の日

声も替わったが、音も替わった。

これはプロデューサーの手腕もあるのだろうが、楽器がきれいに分離してサウンドが立体的に聴こえる。そのせいで、かなり音量を上げてもうるさく感じないのだ。基本的にヘヴィ・メタルが苦手なはずのわたしが楽しめるのはこのアルバムのサウンド・プロダクションによるところが大きい。ドラムがまた良い音してる。

スピード感はもちろんのこと、攻撃的な演奏のキレ味、複雑な楽曲のめくるめく展開や、全体に通底する凛とした重厚感など、その圧倒されるような完成度はやはりヘヴィ・メタル界の聖典と言われるだけのことはある。

A1「侵略者」は、いきなりわたしの耳を惹きつける。この先を聴きたいと思わせるのに最適なオープニング・トラックだ。シングル・カットされたB2「誇り高き戦い」の意外なポップさも嬉しいし、タイトル曲のB1「魔力の刻印 」や、劇的に展開するラストの大作「審判の日」も聴きごたえのある名曲だ。

全英チャートで初の1位を獲得し、さらには全米チャートでも33位まで上昇、全世界で1,500万枚をセールスする大ヒット作となった。本作をアイアン・メイデンの最高傑作に挙げる人も多い。

しかし米国の特に南部では、本作はキリスト教の保守層から大いなる怒りを買った。タイトル曲やアートワークが悪魔崇拝や反キリストを象徴しているとしてデモ活動が起こり、何百枚ものレコードが燃やされた。しかし、燃やすためであってもレコードが売れたことには変わりないし、またこの騒動は逆に大いに宣伝になったに違いない。アメリカで初のトップ40入りなんて、そのおかげとしか考えられない。

親や先生が「聴くな」と言えば、子どもたちは余計に聴きたくなるに決まっているのだ。

↓ シングル・カットされ全英7位のヒットとなった「誇り高き戦い」。イギリス人がアメリカ大陸に渡り、先住民を追い出した話を、ギターとハイハットと肺活量で語る。

↓ アルバムのハイライトでライヴでも定番となった「審判の日」。死刑囚の心の声を歌っている。2本のギターが踊るように絡み合いながら、やがて怒涛のクライマックスへ疾走する。

(Goro)

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