マニック・ストリート・プリーチャーズ/リトル・ベイビー・ナッシング (1992)

【90年代ロックの快楽】
Manic Street Preachers
Little Baby Nothing (1992)

マニック・ストリート・プリーチャーズの1stアルバム『ジェネレーション・テロリスト(Generation Terrorists)』からのシングルで、全英29位まで上昇した。

ヴォーカルで参加しているのはアメリカの元ポルノ女優、トレイシー・ローズで、「クソ野郎とすべての男たちの欲望による女性への性的搾取」をテーマにした歌らしい。

トレイシーは15歳のときに、義父や、恋人(と信じていた)二回り年上のポルノディレクターなどのクソ野郎たちに言いくるめられ、年齢を偽ってポルノ界にデビューした。

トレイシーはそのベビー・フェイスで爆発的な人気となったが、年齢詐称が発覚して18歳の時に引退した。作品の制作者たちは逮捕された。

君の少女のような純粋さと美しさは、おもちゃのように男どもに酷使され、使い捨てられた

みんながわたしを愛してると言って、わたしの切り身を欲しがっている。私の心は死んでるわ

(written by Manic Street Preachers)

トレイシーは曲を聴いて「これはまさにわたしのことだ」と一聴して気に入り、参加を快諾したと言う。

当時のわたしは「また目立ちたがりのマニックスが色物企画をやっとるわ」ぐらいに思って完全スルーしていたが、後に聴いて、その曲の良さに自分の不見識を恥じた。

当時のマニックスとしては異色と言えるほどポップな曲ではあるけれども、彼らの優れたポップ・センスが垣間見えた、ケレン味がなく、開放感さえある素敵な曲だ。

当時24歳のトレイシーの声には、少女のような純粋さと多くの傷を負った翳りによるリアリティがあり、とてもハマっている。

ちなみに、下のMVにトレイシー・ローズは出演していない。トレイシーはスケジュールが合わず、代役にモデルの女性を使ったということだ。

また、当時マニックスの追っかけをしていた素人時代のシャンプーの二人がチラッ、チラッと出演している。

(Goro)