ジャーニー/セパレイト・ウェイズ (1983)

FRONTIERS

【80年代ロックの名曲】
Journey
Separate Ways (1983)

1983年1月にリリースされた8枚目のアルバム『フロンティアーズ』からシングル・カットされ、全米8位の大ヒットとなった、ジャーニーの代表曲のひとつだ。

野球ファンにはTBS系の侍ジャパンの試合中継で使い倒された曲としてもお馴染みだろうし、とにかくあちこちでよく使われるので、ジャーニーなんて知らなくても、イントロを聴けば「これ知ってる!」ってなる人は多いに違いない。

しかしジャーニーの全盛期を知るわれわれの世代にとって、この曲といえば、あのPVは避けて通れない問題である。

初めて見たときはなかなかの衝撃であった。

ロック史上最もダサい、最も恥ずかしい、最も笑えるPVのひとつとして今でも語り継がれているに違いない。

当時は、彼らはこれを真剣にやっているのか、フザけているのか、はたまたちょっと狙っているのか、よくわからなかった。しかし今回いろいろ調べてみて、あれはどうやら真面目にやっていたらしいことがわかった。

ジャーニーはそれまで演技をするPVを撮ったことがなく、すべてはプロデューサーと監督に言われるがままにする以外になかったという。そもそも低予算で時間もなく、そのうえ監督には才能もなかったらしい。

その結果、港の倉庫街に謎の女とバンドメンバーが出会うシュールな設定、変なポーズのエア演奏や、楽器が現れたり消えたりする珍妙な演出と、演技に慣れていないメンバーたちのあまりに真剣なドヤ顔。もはや笑いをこらえるのは至難の業である。

曲がヒットしたためPVはMTVでヘビロテとなったが、キーボードのジョナサン・ケインはマネージャーに電話をしてこのPVの放映を止めることができないか相談したという。彼はまた、こうも語っている。「あのエアキーボードのことは一生忘れられない。私がどれだけキャリアを積み重ねても、人は遅かれ早かれ『セパレイト・ウェイズ』のビデオについて私に尋ねてくるのだ」

また、ギターのニール・ショーンは「もう笑うしかない。恥ずかしくて見ていられない」とコメントしている。

ヴォーカルのスティーヴ・ペリーは、もともと振り付け演出のPV制作に反対していたという。

しかしその彼が撮影現場にこっそり連れてきていた当時の恋人が、ビデオに出演する女性モデルになぜか嫉妬し、彼女を外すよう求めたことで現場は紛糾し、修羅場と化したという。そんな最悪の空気の中で撮影が行われたことで、一層メンバーたちの固い表情を作り出すことになったことも想像に難くない。

ちなみにこのPVを撮った監督には、その後仕事のオファーが絶えてしまったのか、他にこれといったものは何も撮っていないという。

そんな、かつては「迷作」として知られたPVだが、今やしかし「伝説」として知られ、ある意味愛されている作品でもある。YouTubeの再生回数はなんと、1.5億回に達している。

一度は見ておいて損はないだろう。

(Goro)