EMF
Unbelievable (1990)
最近、若者のあいだで90年代ファッションやカルチャーが流行っているのだそうだ。
DA PUMPの「U.S.A.」を若者たちが「ダサカッコいい」と言うのもそうだけど、「一周回って面白い」ということなのだろうが、本来なら対義語であるはずの「カッコいい」と「ダサい」を同時に良いと思えるなんて、まるで禅の境地に達しているかのようだ。
われわれの若い頃にはそんな高度な境地にはまだ達していなかった。カッコいいものが正義で、ダサいものは悪だと思っていた。
しかし結局そんなものはただその時代の国民共通の幻想や思い込みみたいなもので、年月が経てば、最先端のオシャレもクソダサく見えることは誰もが経験があるにちがいない。
なので今はもう、最新のオシャレはカッコいいけれど、同時にクソダサいものであるということもみんなうっすらとわかっているのだ。人類も進化したものだ。
ならばわたしなりに、90年代ロックの「ダサカッコいい」やつをお薦めしてみようと考えていたら、これを思い出した。EMFの「アンビリーヴァブル」だ。
EMFは当時、ジーザス・ジョーンズのパクリ弟分みたいな感じでイギリスから出てきた。スケーター・ファッションで。
デジタル・ダンス・ビートとロックとヒップホップを融合させた、当時はロックの最先端として迎えられ、全英3位、全米1位と大ヒットした曲がこの「アンビリーヴァブル」だ。
「ダサカッコいい」か「カッコダサい」か、あるいは「ダサダサい」かは、各人の判断にお任せする。
しかし最先端というのは次に待ち構えている最先端に確実に取って代わられる運命にあるわけで、移りゆく世にし有りせばうつせみの人の言の葉でもあるので、EMFも3枚のアルバムを残して、97年には解散してしまった。
(Goro)