Suck You Dry (1992)
80年代の終わりに、70年代のガレージ・ロックやハード・ロックへの愛が強すぎる、時代遅れの田舎のロック野郎たちが、ワシントン州シアトルのインディ・レーベル《サブ・ポップ》から続々とデビューした。マッドハニー、パール・ジャム、サウンドガーデン、L7、アリス・イン・チェインズ、そしてニルヴァーナなどなど。
90年代に入ると、彼らの騒々しくて耳障りな音楽が旋風を巻き起こし、〈グランジ・ロック〉と呼ばれて持て囃された。
〈グランジ〉とは「薄汚い」「見苦しい」という意味である。彼らはそのサウンドと、ファッションも含めてそう呼ばれた。
失礼な呼び名ではあるが、もちろんディスられているわけではなく、それがカッコいいとされたのだ。
ファッションと言っても、だいたいネルシャツと破れたジーンズという、映画でよくゾンビが着ている格好みたいなものである。
その中でもマッドハニーの音楽性は、ニルヴァーナよりももっと〈グランジ〉という言葉が良く似合った。
見た目はまあ、どっちも同じようなものである。
引きずるような重量級のサウンドでも決してシリアスになりすぎず、どこかユーモラスなところがあるからマッドハニーの音楽は楽しい。
最新鋭のスタジオで電子機器を使って作られる養殖ロックではなく、野山を自由に駆け回る野生のロックだ。
この曲はマッドハニーがグランジブームの勢いに乗って〈全米オルタナティヴチャート〉に送り込んだ唯一のシングルだ。23位だった。それが彼らのテッペンである。
ストゥージズのアルバムに入っていたとしても違和感がないような、ラウドでキレのいい、最高のグランジナンバーだ。
(Goro)