ヘヴィ・ロックの時代を拓いた最恐作 〜KOЯN『KOЯN』(1994)【最強ロック名盤500】#349

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【最強ロック名盤500】#349
KoЯn
“KoЯn” (1994)

厭なジャケットだなあ。

この後に起こりそうな悲劇が想起されて、気分が悪くなる。聴く前からだいぶ悪印象だ。

なので、この影だけ写っているシザーハンズ君は実は心優しきモンスターで、ブランコの少女と仲良しになり、お互い悩みを打ち明け、少女が義理の父親から虐待を受けていることを知ったシザーハンズ君はその義父を八つ裂きにして少女を救う、という心温まるストーリーが展開されるのだと勝手に思い込むことにした。

米カリフォルニアで結成された5人組のバンド、KOЯNは、90年代後半のロック・シーンに新たな流れを造った重要なバンドだ。

ちなみに読み方は「コーン」だけれども、日本でも「KOЯN」という表記で浸透しているらしいので、それに従う。

ロックにヒップ・ホップの要素を取り入れて90年代に成功したバンドと言えば、レッチリ、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの順で出てきたけれども、KOЯNの場合もまた独自の方法でロックとヒップ・ホップを融合させた、新しいヘヴィ・ロックを造り出した。

低いほうの弦をそれぞれ足した、7弦ギターと5弦ベースによる重低音がバンド・サウンドの特徴である。特にベーシストのフィールディの独特のスラップ奏法によるプレイは、ほとんど打楽器と化している。

本作はそんな彼らの1stアルバムとして、1994年10月にリリースされた。

【オリジナルCD収録曲】

1 Blind
2 Ball Tongue
3 Need To
4 Clown
5 Divine
6 Faget
7 Shoots and Ladders
8 Predictable
9 Fake
10 Lies
11 Helmet in the Bush
12 Daddy

ヒップ・ホップのグルーヴに合わせて集団で打擲するような暴力的なサウンドの、ダークなヘヴィ・ロックだ。もちろん、ただ暴力的なだけではなく、ちゃんと音楽的である。ただ、その不気味な音空間は、生々しい恐怖を感じさせるものではあるけれども。

音だけ聴くとマッチョなイメージが湧くけれども、歌っている内容は真逆で、世界の理不尽さに傷つけられた被害者の感情そのものだ。

ヴォーカルのジョナサン・デイヴィスの叫びは男らしい咆哮でもアジテーションでもなく、カッコ悪く泣き喚き、救いを求める叫びなのだ。

ラストの17分間にわたる「Daddy」は、ジョナサンが幼少時に実父ではない「Daddy」による性的虐待を初めて告白し、感情を抑えきれなくなり実際に泣き出してしまう。演奏も止まっているけれども、プロデューサーのロス・ロビンソンは「そのまま歌い続けろ!」と録音を止めず、泣き声もそのまま収録されている。ちょっとさすがにこれは、わたしも二度は聴けなかった。

ジョナサンは30年後にこう語っている。「24歳の自分が、抱えていた痛みを世界に向けてさらけ出すことに、どれほど緊張していたか覚えている。このアルバムが、暗闇の中にいる多くの人たちの助けになったことは、信じられないほど素晴らしいことだ」(2024年10月、自身のSNSにて)

ちなみにジョナサンの幼馴染であるベースのフィールディも、幼少の頃のジョナサンに万引きを強要したり、三輪車で轢くなどのイジメをしていたことを告白している。

アルバムは当初こそ全米72位止まりだったが、その後も売れ続け、200万枚を突破した。

↓ KOЯNの代表曲であり、この時代のヘヴィ・ロックを象徴した「Blind」。

↓ バグパイプを使ってホラー映画のような不気味な世界観を作り出した「Shoots and Ladders」。

(Goro)

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