この心地良さには抗えない 〜レニー・クラヴィッツ『自由への疾走』(1993)【最強ロック名盤500】#340

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【最強ロック名盤500】#340
Lenny Kravitz
“Are You Gonna Go My Way” (1993)

なんだかよく分からないけれども、怪しいジャケットである。いったい何をしておるのか。

それはまあ各自で想像していただいて、楽しんでいただければいいのだが、どうにもこの人にはどことなく胡散臭さ、まがいもの感、怪しさがつきまとう。

なのでわたしは若い頃はあまり聴かなかったのだ。

なんとなく、「今、巷で大人気!バカ売れ!おかげさまで100万セット突破!」みたいな通販の広告みたいなもので、気にはなるけどなんだか嘘くさい。これは手を出しちゃいけないな。

みたいな感じだったのである。たぶん、めちゃくちゃ失礼なことを言っているが、青々とした若者というのはすぐに騙されたり丸め込まれたりするので、常に不安で疑心暗鬼なものである。

でももうわたしもすっかり大人になり、この胡散臭さや怪しさを逆に楽しめるぐらいの胆力は身についたのである。

すべての備品・調度品を昭和の時代の物で揃えた、ドレッドヘアに鼻ピアスのマスターがいる、怪しげな喫茶店みたいなものである。胡散臭いが、しかし香り豊かなコーヒーは絶品だったりする。バネの効いた、ビロード生地のソファーの座り心地もなんだか懐かしい。

そんな感じの本作は、レニー・クラヴィッツの3rdアルバムとして、1993年2月にリリースされた。

【オリジナルCD収録曲】

1 自由への疾走
2 ビリーヴ
3 カモン・アンド・ラヴ・ミー
4 悲しみの十字架
5 ジャスト・ビー・ア・ウーマン
6 愛ある日々を
7 ブラック・ガール
8 マイ・ラヴ
9 シュガー
10 シスター
11 エルーセリア

アルバムは全米12位、全英1位、日本でもオリコン6位と、レニー・クラヴィッツにとって過去最高位を記録し、世界的なヒットとなった。

とくに、ジミ・ヘンドリックスを彷彿とさせるようなオープニング曲「自由への疾走」は、日本でも多くのCMやTV番組にも使用され、日本では彼の代表曲の扱いとなっている。

ただし、「自由への疾走」のような激しめのロックは、本作には実はこれしかない。なので、あんな曲がたくさん入っているアルバムを期待して購入した方は、期待ハズレだったかもしれない。

確かに「自由への疾走」は最高だが、2曲目以降はわたしの好物である70年代のニュー・ソウルみたいな曲調のものが多かったりして、それはそれで惹き込まれるのだ。

相変わらずビートルズ調の「愛ある日々を」のような賑やかな曲もあるけれども、全体にはソウル・バラードが多く並ぶ、静かで、鼻ピアスにしては真面目な顔をしたアルバムである。わたしはそれが気に入っている。

アルバムの発売から20年後にレニー・クラヴィッツはこう回顧している。「当時、音楽業界のトレンドを追うのではなく、自分が信じる音楽を作る自由を貫くことを意識していた」(BBCインタビュー 2013年)。確かに、貫いている。

それにしても良い音だ。楽器も機材も60〜70年代のもののみを使用するという、当時は時代錯誤に思えた彼のこだわりが、今ではしっくりくる。

若い頃は、古びた喫茶店なんかよりおしゃれなスタバの方に魅力を感じていたけれども、年をとってみると、今ではすっかりなくなってしまった昭和ふうの喫茶店を見つけて思わず寄り、懐かしい居心地の良さを感じて嬉しくなってしまう、そんな気分になれるアルバムだ。

↓ 全英4位、全豪1位など、最も売れたシングルとなった代表曲「自由への疾走」。

↓ 日本では車のCMにも使われた70年代ソウル風の「ビリーヴ」。

(Goro)

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