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Metallica
“Metallica” (1991)
1983年にデビューした米ロサンゼルス出身のバンド、メタリカは、猛スピードで複雑な曲を演奏する、スラッシュ・メタルの筆頭格だった。
しかし1991年8月にリリースされた本作、5thアルバム『メタリカ』(タイトルが無くジャケが真っ黒なので「ブラック・アルバム」とも呼ばれる)で彼らはスピードにこだわるのをやめ、楽曲の複雑さや大作志向も見直し、速弾きギター・ソロなどいわゆる古典的なメタルのお約束も捨て、シンプルでグルーヴを重視した方向性に大転換する。
そのきっかけとなったのが、直前のツアーで、プログレッシヴな大作志向の楽曲に観客が退屈していることに気づき、危機感を抱いたからだと言う。そこで次のアルバムでバンドが手本にしようと決めたのがAC/DCの『バック・イン・ブラック』だったというから面白い。だからブラック・アルバムなのかな。
そんな大胆な路線変更を試みた本作がリリースされると、当然ながら賛否両論が巻き起こった。速い曲がないし、速弾きもないし、替わりに美しいラヴ・バラードがある。ゴリッゴリのメタルファンからは酷評されるのも無理はなかった。
メタリカのその「転向」の話題が音楽誌でもやたらと取り上げられたため、普段はヘヴィ・メタルをまったく聴かないわたしまでが気になり、このアルバムを買ったのがメタリカとの出会いだった。
【オリジナルCD収録曲】
1 エンター・サンドマン
2 サッド・バット・トゥルー
3 ホゥリアー・ザン・ゾウ
4 ジ・アンフォーギヴン
5 ホェアエヴァー・アイ・メイ・ローム
6 ドント・トレッド・オン・ミー
7 スルー・ザ・ネヴァー
8 ナッシング・エルス・マターズ
9 オブ・ウルフ・アンド・マン
10 ザ・ゴッド・ザット・フェイルド
11 マイ・フレンド・オブ・ミザリー
12 ザ・ストラグル・ウィズイン
わたしはこのアルバムが気に入った。ヘヴィ・メタルに対するイメージが変わったぐらいだった。AC/DCを手本にしたうんぬんは当時はまだ知らなかったので、オルタナティヴ・ロックの隆盛に刺激を受けて、それを手本にしたのかと思っていた。
どうやら少しちがったみたいだけれども、しかし結果的に時代の流れに沿った方向性へと転換出来たということは、観客やリスナーたちの反応や、シーンの変化に彼らが敏感だったということなのだろう。
本作は否定的な反応などものともせず、キャリア初の全米・全英ともに1位を獲得し、全世界で3,000万枚近くを売り上げるメガヒットとなった。
↓ 先行シングルとしてリリースされた「エンター・サンドマン」は全米16位、全英5位のヒットとなり、メタリカの代表曲となった。グルーヴ感が強いそのカッコ良さから、メタルファン以外にも広く愛されている。わたしもこの曲がメタリカで一番好きだ。
↓ ファンの否定的な反応が特に強かったという、ラヴ・バラード「ナッシング・エルス・マターズ」。
(Goro)


