Bauhaus
“Mask” (1981)
バウハウスの1stアルバム『イン・ザ・フラット・フィールド』は、大音量で聴けば切先鋭い暗黒の放射を全身に浴びてリフレッシュできる、暗黒浴にうってつけのアルバムだった。
この2ndでは暗黒の中にも、ファンク、ダンスビート、ダブ、シンセ・サウンド、トランペット、逆回転なども取り入れ、アレンジも多彩になり、単なる暗いだけのゴシック・ロックを超越し、一気に音楽性の広がりを見せた急成長作だ。
本作は1981年10月にリリースされ、全英アルバムチャートの30位まで上昇した(前作は72位)。
【オリジナルLP収録曲】
SIDE A
1 ヘア・オブ・ザ・ドッグ
2 パッション・オブ・ラバーズ
3 オブ・リリーズ・アンド・リメインズ
4 ダンシング
5 ホロウ・ヒルズ
SIDE B
1 キック・イン・ジ・アイ
2 イン・フィアー・オブ・フィアー
3 マッスル・イン・プラスチック
4 マン・ウィズ・ジ・エックスレイ・アイズ
5 マスク
B1「キック・イン・ジ・アイ」はアメリカのダンス・チャートの29位まで上昇するヒットとなった。同じくダンサンブルな「パッション・オブ・ラバーズ」はクラブでも人気が高かったという。
ポスト・パンクのシーンでは前年にキリング・ジョークがパンクとダンスを暗黒風に融合して新しい世界を切り拓いた感があったが、バウハウスは彼らにに負けじとさらにそれを超えるものを作ろうとしたのではないかとわたしは想像する。ポスト・パンクの出世争いみたいなものだ。
ラストの「マスク」は今回もまたちゃんと暗黒浴用の新しい浴槽のようだけれども、前作と違うのはよりカラフルになってアートの要素が濃いことだ。まるで真っ黒けの浴槽に赤や白の美しい花びらを浮かべたような。
わたしは決してゴスみたいな暗いものが好きなわけではなくて、どちらかというと苦手な方なのだけれども、バウハウスは基本的に音響を探求しているようなところが好きだ。独特の音空間が面白いし、ギターなんかもときどき「いい音出すなあ」と惚れ惚れすることがある。細かいところまでこだわりが強そうな職人肌のドラムもいい。
たぶんバウハウスは1stのほうが有名だけれども、内容的にはこの2ndの方が音楽的に充実していて、初めて聴く人にも薦めやすい名盤だと思う。
↓ クラブでも人気が高かったというダンサンブルな「パッション・オブ・ラバーズ」。
↓ ファンク・ビートを取り入れ、米ダンスチャートで29位まで上昇した「キック・イン・ジ・アイ」。
(Goro)