T.Rex
20th Century Boy (1973)
浦沢直樹の漫画『20世紀少年』のタイトルになり、映画化もされ、この曲も劇中で使われた。他にも様々なCMや番組で使用されるなど、日本では間違いなくT.レックスではいちばん有名な曲だろう。
イントロのおそろしく単純なギターリフは、しかし滅多にないほど人々を魅了したリフでもある。そのカッコ良さ、そのシンプルさ、その簡単さは、ロックンロールの輝かしいシンボルのようだ。
この曲はT.レックス初来日の折に、コンサートツアーの合間の1972年12月3日、東京赤坂の東芝EMI第1スタジオでレコーディングされた。1973年3月にシングルとしてリリースされ、全英3位のヒットとなった。
漫画『20世紀少年』は、中学生の主人公が放送室を乗っ取ってこの「20センチュリー・ボーイ」のレコードを校内に大音量で流すシーンから始まる。「そうすればなにかが変わるかもしれない」と思ったからだ。
それは大昔のこと、「ロックが世界を変えるかもしれない」と信じられていた時代の話である。
でも、なにも変わらなかった、という挫折から物語は始まる。
でも、やっぱりなんか変わったんじゃないか、というところで物語は終わる。
変わったに決まってるだろう、とわたしは思ったものだ。
世界が変わったかどうかはわからないけれども、ロックが多くの人々の人生を変えたことは間違いない。人生が変わったのなら、その人にとっては世界が変わったのと同じことだ。もちろん、わたしもそのひとりだ。
もしもロックが無かったら、わたしには友人なんてひとりもいなかったかもしれない。なんの刺激もなく、退屈に耐え、世の中の理不尽もそんなものかと諦め、共感できるものもない、ただただ孤独に耐えるだけの人生だったかもしれない。それを思うとずいぶんマシな人生に変えてくれたものだと思う。
T.レックスはいちおうバンドではあるが、印象としてはマーク・ボランのソロ・プロジェクトみたいなものである。
マーク・ボランはルックスが派手で可愛らしかったし、音楽もとっつきやすかったので、イギリスではビートルズに匹敵する人気だったという。日本でもすごく人気があった。1971年から73年の3年のあいだのことである。
でもどうやら性格は悪かったらしく、1974年には仲間に去られてひとりぼっちになって、麻薬中毒になったりデブになったりして人気がなくなった。
1977年には息子が生まれて、よっしゃもう一回頑張るぞ、と再起して生活も改め、評価も持ち直しつつあったが、1977年9月16日、奥さんではない彼女とロンドンのレストランで食事をし、二人とも酒を飲み、彼女が運転する車に同乗し、街路樹に激突した。彼女は重傷を負い、マーク・ボランは即死だった。29歳だった。
いろいろ残念なところもあるけれども、しかし彼の音楽は最高にカッコよかった。
↓ イギリスのヘヴィメタル・バンド、ガールスクールが1983年にシングル・リリースしたカバー。全英8位のヒットとなった。
↓ 1998年の映画『ベルベット・ゴールドマイン』に出演してこの曲を演奏したプラシーボが、翌年のブリット・アワードでデヴィッド・ボウイと共演したカバー。
(Goro)