⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
R.E.M.
“Automatic for the People” (1992)
R.E.M.の8枚目のアルバム『オートマチック・フォー・ザ・ピープル』は、間違いなく彼らの最高傑作だ。90年代ロックを代表する名盤のひとつでもある。
1992年という、オルタナティヴ・ロック・ブームの真っただ中で、R.E.M.にしては過激なほどにポップな前作『アウト・オブ・タイム』でしかし評価もセールスも大成功を遂げた後に、今度は浮かれたシーンから一歩引くように、アコースティック・サウンドを中心にした、シリアスで内省的な本作を発表したのは衝撃的だった。
アルバムのオープニング曲「ドライヴ」から、いきなり真っ暗である。シビれた。しかも1番最初にシングル・カットしたのもこれだ。素晴らしい。全米28位、全英11位といまいちヒットしなかったが、まあ当然のことだろう。
ロック・ファンの若者たちに向けたメッセージのような内容らしいが、このおそろしくダークでシリアスな曲を夜のドライヴに選ぶようになればロックリスナーとしても一人前と言えるかもしれない。寝る前に聴くのもいいだろう。歌詞の内容については、以下を参照することをお薦めする。「TAP the POP ドライヴ~R.E.M.が切りひらいた新たなロックンロール」
昨日取り上げた「マン・オン・ザ・ムーン」は2枚目のシングルカットで、代表曲のひとつとなった。4枚目のシングルカットとなった「エヴリバディ・ハーツ」も暗くて感動的な名曲だし、5枚目のシングル「ナイトスウィミング」も美しい曲だ。地味だが、味わい深い。とにかく、ダークな名曲揃いのダークな名盤なのだ。
カート・コバーンの遺体が自宅の地下室で発見されたとき、オーディオからこのアルバムが大音量で流れていたことはよく知られている。
こんなことを言ったら怒られるだろうが、たしかに葬式のBGMには使えそうな気がする。暗いが、すべてが真摯で美しい音楽だからだ。
ちなみに、このアルバムにおけるストリングスのアレンジは、元レッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズが担当している。決して派手過ぎず、抑制の効いた印象的なストリングスが、このアルバムの奇跡のようなクオリティに大きく貢献している。
↓ 「エヴリバディ・ハーツ」も暗くて感動的な名曲だ。全米29位、全英7位。
(Goro)