Neil Young & Crazy Horse
“Ragged Glory” (1990)
80年代は移籍先のレーベル、ゲフィンと対立し、作風も迷走を極めたニール・ヤングだったが、古巣のリプリーズ・レコードに戻ると89年に名曲「ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド」を発表し、再び覚醒した。そして1990年9月、クレイジー・ホースとの本作『傷だらけの栄光』で遂に完全復活を果たしたのだ。
翌年のニルヴァーナの大ブレイクをきっかけに米国のオルタナティヴ・ロックが若者を中心に支持され、「歪んだ轟音ギターにシンプルな歌メロ」という、ロックの原点に還るようなパワフルなギター・ロックは、「グランジ(薄汚いの意)」と呼ばれ、続々とフォロワーを輩出し、大きな盛り上がりを見せた。
ニールとクレイジー・ホースにとって本作は、21年前の1969年に発表したアルバム『ニール・ヤング・ウィズ・クレイジー・ホース(Everybody Knows This Is Nowhere)』以来、より激しさを増した以外はほとんど変わらないギター・ロックのスタイルだったが、ダイナソーJr.やソニック・ユースなど当時の若いアーティストたちは絶賛し、ニール・ヤングはあらためて「グランジ・オブ・ゴッドファーザー」と呼ばれてその復活が歓迎されたものだった。
「グランジ」という言葉は音楽のことだけでなく、ロックスターらしからぬTシャツとネルシャツ、ダメージ・ジーンズにスニーカーという飾り気のないファッションも指したが、それもまたニール・ヤングとクレイジー・ホースの、30年以上も変わらないファッションそのままでもあった。
【オリジナルCD収録曲】
1 カントリー・ホーム
2 ホワイト・ライン
3 F*!#IN’ UP
4 オーヴァー・アンド・オーヴァー
5 ラヴ・トゥ・バーン
6 ファーマー・ジョン
7 マンション・オン・ザ・ヒル
8 あの頃の日々
9 ラヴ・アンド・オンリー・ラヴ
10 マザー・アース(自然の賛歌)
この『傷だらけの栄光』は、ニール・ヤングの膨大なディスコグラフィの中でも5本の指には入る名盤だとわたしは思っている。
全10曲のすべてが、思わず口ずさんでしまう「歌」に溢れ、クレイジー・ホースのラフで豪快な演奏と、ニールの喜怒哀楽がそのまま音になったような激しいギターソロ、暗い雲が過ぎ去った後の陽光のように明るい曲想、一発録りによるリアルで生き生きとした、自由で悦びにあふれたロックだ。
当時のわたしは、探し求めていた本物のロックをここに見つけた気がしたものだ。
90年代のロックは面白くなりそうだなあ、とワクワクしたことをよく憶えている。
↓ アルバムのオープニングを飾る、スタジオの空気感まで伝わってくるような、いかにも一発録りという演奏の「カントリー・ホーム」。
↓ シングル・カットされ米ロック・チャートの3位まで上昇した「マンション・オン・ザ・ヒル」。
(Goro)


